作品紹介
「モンテカルロ・イリュージョン」待望の再演!!
耐震補強工事と内装一新のため改修に入った新宿・紀伊國屋ホールが、2021年6月に改修後の柿落とし公演をスタートする。
日本の演劇の聖地として57年の伝統を誇る新しい紀伊國屋ホールの演劇公演第一弾を飾る「新・熱海殺人事件」に続く第二弾として、「熱海殺人事件」の数あるバージョンの中で最も異端な作品「熱海殺人事件 モンテカルロ・イリュージョン」を上演する。
「熱海殺人事件」は言わずと知れた日本演劇史上屈指の名作であり、紀伊國屋ホール57年間の歴史の中で最も上演され続けている、つかこうへいの伝説的作品である。第18回岸田國士戯曲賞を受賞し、後に映画化され、演劇界につかブームを巻き起こした。演劇に携わる人間であれば、誰しも紀伊國屋ホールと聞けば「熱海殺人事件」を連想する。
昨年、つかこうへい没後10年の節目に開催された「つかこうへい演劇祭」。その中で、『改竄・熱海殺人事件 モンテカルロ・イリュージョン』と銘打ち、中屋敷法仁が演出を手掛け上演された本作は、開幕とともに観客にセンセーションを巻き起こし話題となった。しかし、感染症の猛威によって、全ての日程を全うすることなく公演中止を余儀なくされた。
あれから1年と数ヶ月。延期になったオリンピックは開催予定のまま、あと100日を切った。しかし、依然として感染症への不安は消えず、人々の生活はさらなる混迷を極めている。「演劇」という名のもとに日本の明日を夢見て、日本の未来を信じ、日本と闘った哲学者の作品を日本に蘇らせることが、今を生きる人々に新たな「希望」を見せてくれると信じ、リニューアルされた紀伊國屋ホールをリベンジマッチの舞台として、再び上演する。
熱海殺人事件
1973年に文学座に書き下ろされ発表された「熱海殺人事件」は、つかこうへいの代表作であり、最年少で岸田戯曲賞を受賞し、紀伊國屋ホールを拠点に、つかこうへい事務所の春の名物として、何度も再演を重ね、東京の春の風物詩とも呼ばるほどになった。
「東京に出て来たら、紀伊國屋でつかこうへいの熱海を見る!!」
当時の学生のあこがれの演劇だった。つかこうへい事務所解散後も、1986年に映画化、1989年の演劇活動再開後も、紀伊國屋ホールでの「熱海殺人事件」だけは、本人の手で上演され続けてきた作品である。タイトルを「売春捜査官」、「モンテカルロ・イリュージョン」などと変化しながら、熱海殺人事件は紀伊國屋ホールで上演され続けた。主演も、三浦洋一、風間杜夫をはじめ、阿部 寛、池田成志、山崎銀之丞、馬場 徹、味方良介など、名だたる俳優陣が、その歴史を作ってきた。
そして、2010年、つかこうへいは永遠の眠りについた。演劇界の巨匠が宇宙へと旅立った。
しかし、紀伊國屋の「熱海殺人事件」は終わらない。この作品だけは、つかこうへいの遺志として、これからもキャスト・スタッフも変貌を遂げながら上演し続ける予定である。
「熱海殺人事件」は、生き続ける。